巨人監督史上トップとなる1291勝を挙げ、リーグ優勝9回、日本一にも3度輝いた。以前は日本シリーズで2年連続4タテを食らった(※連続して敗れること)ソフトバンクを倒すことに執念を燃やしていたが、このところはそうした発言は影を潜め、「もうやり残したことはない」「早く後任が育ってほしい」と話すことも少なくなかったという。

　「確かに、やり切ったという気持ちもあると思います。ただ、6日の阿部慎之助新監督の就任会見に同席した際に口にした『ジャイアンツの監督たるや、希望に満ちている陽でないといけない』よろしく、陽でいられたのは、それだけが理由ではありません。

　今季は散々、ファンから叩かれることも多かった中、最後はスタンドから『タツノリ』コールも起こるなど、惜しまれつつ辞める形になった。ネット上での反応も同様だった。続投という選択肢もあった中、それを選ばずにいい引き際を作れたことに安堵できたのでしょう」(巨人担当記者)

優勝争いに加われることができない中でも続投が既定路線とされてきたが、シーズン終盤に入るとファンの“原離れ”が膨れ上がっていったことで球団は手を打たざるを得なくなった。それが2年連続のBクラスにリーチが掛かっていた9月29日のオーナー会議後の山口寿一オーナーの発言だ。

　「優勝争いに絡むこともできなかった。ファンの皆様に大変、申し訳ないシーズンになってしまった」とファンに謝罪し、原前監督の続投について聞かれて「来季のことは真剣に考えなきゃいけないと思っています」と続けたのだ。

　「あれは完全な観測気球。原の続投に対してファンがどういう反応をするのか見たかった。そして、その反発は大きかった。ただ、阿部は二軍監督時代に選手に課した罰走の件だったり、昭和的な考えが強く現場からの評判が上がってこない。もう1年、原のもとで経験を積ませたかった。

　そのため原に全権監督を取り上げた上で続投させようとした。粛清は自分たちの口からは出さないもののメディア等で報じられれば、世論は球団も考えたんだなとなる。なにもしないまま続投では批判を鎮静化することはできないし、マンネリ化が著しく来季限りでやめてもらうために原の意にそぐわないGMを送り込む腹づもりだったのは想像に難くない。原はその方向性に進むことを嫌って、辞任を選んだ」(球団関係者)


第一次政権では、やはりまだ契約が残っていて続投が基本路線だった中、当時の渡辺恒雄オーナーが「(阪神との)3連戦で3連敗したら話は別」と条件をつけてきたことに、若気の至りで怒り心頭となって辞表を叩きつけた姿はもうなく、冷静なジャッジを下したわけだ。その先に見据えるものはあるのか。

　「さすがに12球団の監督になることはもうないでしょう。ただ、侍ジャパン、WBCでの監督には意欲を持っているというのは近しい関係者から伝え聞いています。

　自分と意見が合わない桑田真澄をファーム総監督というわけのわからない役職にして遠ざけたり、自分のまわりにイエスマンしか置かずにチームの新陳代謝を滞らせたところはありますが、短期決戦は別物。歴代9位の勝利数を積み重ねた監督ですし、第二回大会で日本を連覇に導いた実績もある。そのときは巨人の監督との兼任ということもあり本人は決して前向きではなかったんですが、今度は専任で本腰を入れてやれる」(前出・担当記者)

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